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TiDB専門家レビュー必須移行バージョン互換性インデックストランザクションサイジング

TiDBからAurora MySQLへ移行するときに確認する項目

公開日 2026-08-13 · 更新日 2026-08-13 · 最終検証日 2026-08-13

結論

TiDBからAurora MySQLへの移行では、「MySQL互換だからそのまま動く」という前提を置かず、採番(`AUTO_INCREMENT` の非連続割り当てと `AUTO_RANDOM`)、主キー構造(クラスタ化/非クラスタ化、`SHARD_ROW_ID_BITS`)、TiDB固有の構文とシステム変数、トランザクションの動作、統計とインデックス選択、文字セットと照合順序、容量(TiKVとInnoDBで必要量が異なる)の7点を実環境で確認してください。挙動はTiDBのバージョンで変わるため、記事ではなく自環境の版で検証することが前提です。

この文書の適用条件

対象製品TiDB(移行元)→ Aurora MySQL(移行先)
確認バージョンTiDBはバージョンによる挙動差が大きいため、必ず `SELECT TIDB_VERSION();` で自環境の版を確認したうえで各項目を検証すること。移行先はAurora MySQL 3.x(MySQL 8.0互換)を想定
適用環境TiDB(セルフホスト/マネージド)→ Amazon Aurora(AWS)
必要権限調査は `information_schema` の参照権限と対象スキーマの `SELECT`。移行実行にはダンプ元の読み取り権限と移行先の書き込み権限
実行影響調査SQLは影響なし。初期ロードとCDC構成は移行元・移行先の双方に負荷をかける
再起動調査は不要。切り替え時の停止時間は選ぶ方式による
最終検証日2026-08-13

そのまま実行できるコマンド

移行元TiDBのバージョンと主要設定を確認する参照のみ
対象
TiDB(全バージョン)
権限
接続権限
変更作業
なし(参照のみ)
Production実行
可能
-- 対象: TiDB(バージョンにより出力が異なる)
-- 権限: 接続権限
-- 変更作業: なし(参照のみ)
-- Production 実行: 可能

-- 1) TiDB のバージョン(VERSION() はMySQL互換の文字列、TIDB_VERSION() はTiDB固有の詳細)
SELECT VERSION() AS mysql_compat_version;
SELECT TIDB_VERSION() AS tidb_version;

-- 2) トランザクションモードと分離レベル
SHOW GLOBAL VARIABLES WHERE Variable_name IN (
    'tidb_txn_mode',
    'transaction_isolation',
    'tidb_constraint_check_in_place',
    'tidb_enable_clustered_index'
);

-- 3) 新しい照合順序フレームワークが有効かどうか
--    (無効な環境では utf8mb4_general_ci の比較挙動がMySQLと異なる)
SELECT VARIABLE_NAME, VARIABLE_VALUE
FROM mysql.tidb
WHERE VARIABLE_NAME = 'new_collation_enabled';

ここで得たバージョンが、以降の全ての判断の前提になります。TiDBは版によって既定値も対応機能も変わるため、本記事の記述と食い違う場合は自環境の出力を優先してください。`mysql.tidb` や `tidb_enable_clustered_index` は版によって存在しないことがあります(エラーになった場合はその機能自体が無い版と判断できます)。

テーブル定義からTiDB固有の属性を洗い出す参照のみ
対象
TiDB(全バージョン)
権限
対象スキーマのメタデータ参照権限
変更作業
なし(参照のみ)
Production実行
可能
-- 対象: TiDB(全バージョン)
-- 権限: 対象スキーマのメタデータ参照権限
-- 変更作業: なし(参照のみ)
-- Production 実行: 可能

-- 1) 定義そのものを出力し、AUTO_RANDOM / SHARD_ROW_ID_BITS /
--    CLUSTERED・NONCLUSTERED / PRE_SPLIT_REGIONS の有無を目視で確認する
SHOW CREATE TABLE SampleDB.sample_table;

-- 2) 主キーの構造を一覧で確認する(TIDB_PK_TYPE はTiDB独自列。
--    存在しない版ではエラーになるので、その場合は 1) を全テーブル分実行する)
SELECT TABLE_SCHEMA, TABLE_NAME, TIDB_PK_TYPE
FROM information_schema.TABLES
WHERE TABLE_SCHEMA NOT IN ('mysql', 'information_schema', 'performance_schema', 'metrics_schema', 'sys')
ORDER BY TABLE_SCHEMA, TABLE_NAME;

-- 3) 主キーの無いテーブル(移行後のCDCで問題になる)
SELECT t.TABLE_SCHEMA, t.TABLE_NAME
FROM information_schema.TABLES t
LEFT JOIN information_schema.KEY_COLUMN_USAGE k
       ON  k.TABLE_SCHEMA    = t.TABLE_SCHEMA
       AND k.TABLE_NAME      = t.TABLE_NAME
       AND k.CONSTRAINT_NAME = 'PRIMARY'
WHERE t.TABLE_TYPE = 'BASE TABLE'
  AND t.TABLE_SCHEMA NOT IN ('mysql', 'information_schema', 'performance_schema', 'metrics_schema', 'sys')
  AND k.COLUMN_NAME IS NULL
ORDER BY t.TABLE_SCHEMA, t.TABLE_NAME;

`AUTO_RANDOM` はTiDB固有でMySQLに同等機能がありません。使っている列はAurora MySQL側で別の設計(`BIGINT` の連番、アプリケーション採番、UUID系など)に置き換える必要があり、値の互換性と桁数の両方を検討してください。`SHARD_ROW_ID_BITS` と `PRE_SPLIT_REGIONS` はTiKVの分散配置のための指定で、Aurora側には対応する概念がありません(そのまま無視してよいのではなく、その指定が必要だったアクセスパターンが移行後にどうなるかを検討してください)。

外部キー・生成列・パーティションの利用状況を確認する参照のみ
対象
TiDB(全バージョン)
権限
対象スキーマのメタデータ参照権限
変更作業
なし(参照のみ)
Production実行
可能
-- 対象: TiDB(全バージョン)
-- 権限: 対象スキーマのメタデータ参照権限
-- 変更作業: なし(参照のみ)
-- Production 実行: 可能

-- 1) 外部キー定義の有無(定義があっても実際に強制されているかは版に依存する)
SELECT CONSTRAINT_SCHEMA, TABLE_NAME, CONSTRAINT_NAME,
       REFERENCED_TABLE_NAME, UPDATE_RULE, DELETE_RULE
FROM information_schema.REFERENTIAL_CONSTRAINTS
ORDER BY CONSTRAINT_SCHEMA, TABLE_NAME;

-- 2) 生成列(GENERATED COLUMN)
SELECT TABLE_SCHEMA, TABLE_NAME, COLUMN_NAME, EXTRA, GENERATION_EXPRESSION
FROM information_schema.COLUMNS
WHERE GENERATION_EXPRESSION IS NOT NULL
  AND GENERATION_EXPRESSION <> ''
ORDER BY TABLE_SCHEMA, TABLE_NAME;

-- 3) パーティション定義
SELECT TABLE_SCHEMA, TABLE_NAME, PARTITION_NAME, PARTITION_METHOD, PARTITION_EXPRESSION
FROM information_schema.PARTITIONS
WHERE PARTITION_NAME IS NOT NULL
ORDER BY TABLE_SCHEMA, TABLE_NAME, PARTITION_ORDINAL_POSITION;

TiDBは長い間、外部キー構文を受け付けつつ制約を強制しない実装でした。強制されるかどうかはバージョンに依存するため、「定義があるか」ではなく「実際に違反INSERTが弾かれるか」を自環境で試して確認してください。強制されていなかった場合、Aurora MySQL側で外部キーが有効になると、これまで通っていたデータ投入が失敗するようになります。

移行対象のデータ量を計測する(そのまま移行先の見積りに使わない)参照のみ
対象
TiDB(全バージョン)
権限
`information_schema` の参照権限
変更作業
なし(参照のみ)
Production実行
可能
-- 対象: TiDB(全バージョン)
-- 権限: information_schema の参照権限
-- 変更作業: なし(参照のみ)
-- Production 実行: 可能
SELECT
    TABLE_SCHEMA,
    TABLE_NAME,
    TABLE_ROWS                                            AS estimated_rows,
    ROUND(DATA_LENGTH  / 1024 / 1024 / 1024, 2)           AS data_gb,
    ROUND(INDEX_LENGTH / 1024 / 1024 / 1024, 2)           AS index_gb,
    TABLE_COLLATION
FROM information_schema.TABLES
WHERE TABLE_TYPE = 'BASE TABLE'
  AND TABLE_SCHEMA NOT IN ('mysql', 'information_schema', 'performance_schema', 'metrics_schema', 'sys')
ORDER BY (DATA_LENGTH + INDEX_LENGTH) DESC;

TiDBの `TABLE_ROWS` と `DATA_LENGTH` は統計情報に基づく推定値です。TiKVは複数レプリカを保持し圧縮も行うため、この値をそのままAurora(InnoDB)の必要ストレージとして使うことはできません。移行先の容量は、代表的なテーブルを実際にロードして実測した比率から見積もってください。

初期ロード用のダンプを取得する
対象
TiDB(Dumpling)
権限
ダンプ対象スキーマへの `SELECT`(TiDB側)
変更作業
なし(移行元は参照のみ)。ただし読み取り負荷がかかる
Production実行
負荷を許容できる時間帯で実施すること
# 対象: TiDB(Dumpling によるダンプ)
# 権限: ダンプ対象スキーマへの SELECT(TiDB側)
# 変更作業: なし(移行元は参照のみ)。ただし読み取り負荷がかかる
# Production 実行: 負荷を許容できる時間帯で実施すること

# まず1テーブルだけダンプして所要時間と出力サイズを実測する
tiup dumpling \
  --host 192.0.2.10 \
  --port 4000 \
  --user sample_user \
  --filetype sql \
  --threads 8 \
  --rows 200000 \
  --filter 'SampleDB.sample_table' \
  --output /var/tmp/dump-sample

# 出力サイズと所要時間を確認する(この実測値だけが計画の根拠になる)
du -sh /var/tmp/dump-sample

まず一部のテーブルで実測し、そこから全体を見積もります。`--rows` を指定するとテーブルを分割して並列に出力できます。`--threads` を上げると移行元の負荷が上がるため、本番稼働中は低めから始めてください。オプション名はDumplingのバージョンで変わることがあるため、`tiup dumpling --help` で確認してください。

差分同期(CDC)の構成を検討する
対象
TiCDC(TiDB側)または AWS DMS
権限
TiCDCの操作権限、またはDMSのIAM権限とエンドポイント資格情報
変更作業
あり(変更データ配信の構成。移行元・移行先の双方に影響する)
Production実行
本番ソースに対する設定変更。事前検証と切り戻し手順が必須
# 対象: TiCDC(TiDB側)または AWS DMS
# 権限: TiCDC の操作権限、または DMS の IAM 権限とエンドポイント資格情報
# 変更作業: あり(変更データ配信の構成)
# Production 実行: 本番ソースへの設定変更。事前検証と切り戻し手順を用意してから実施

# TiCDC で MySQL 互換のシンク(= Aurora MySQL)へ変更を流す例。
# CLI のオプション名はTiDB/TiCDCのバージョンで変わる(--pd と --server など)ため、
# 必ず自環境のバージョンのドキュメントで確認すること。
tiup ctl cdc changefeed create \
  --server "http://192.0.2.10:8300" \
  --changefeed-id "example-changefeed" \
  --sink-uri "mysql://sample_user@example-rds-endpoint:3306/"

# 作成後は状態と遅延を確認する
tiup ctl cdc changefeed list --server "http://192.0.2.10:8300"

TiCDCのCLIはバージョン間でオプション名が変わっています(`--pd` から `--server` への変更など)。ここに書いた形をそのまま使わず、自環境のバージョンのドキュメントに合わせてください。AWS DMSをソースTiDBに対して使う場合は、TiDBがDMSのソースとしてサポートされているか、どのモード(フルロードのみ/CDC込み)で使えるかを、実際に使うDMSのバージョンで確認してください(本記事では断定しません)。パスワードはコマンドラインに直接書かず、環境変数や設定ファイルを使ってください。

結果の読み方

意味確認するポイント
tidb_versionTiDBの実バージョン全ての互換性判断の前提。記事より自環境の版を優先する
tidb_txn_modeトランザクションモード(楽観/悲観)楽観なら、コミット時に競合エラーを返す前提でアプリが書かれている可能性がある
new_collation_enabled新しい照合順序フレームワークの有効・無効無効ならutf8mb4系照合順序の比較挙動がMySQLと異なる。移行後に重複判定が変わりうる
TIDB_PK_TYPE主キーがクラスタ化されているかクラスタ化前提の性能特性がAurora側で再現されるとは限らない
estimated_rows統計情報に基づく推定行数実数ではない。検証用の `COUNT(*)` と突き合わせる
data_gb / index_gbTiDB側で報告されるデータ・インデックスサイズTiKVの複製・圧縮を含むため、Auroraの必要容量にそのまま使えない
REFERENCED_TABLE_NAME外部キーの参照先定義の有無ではなく、実際に強制されているかを試して確認する
GENERATION_EXPRESSION生成列の式関数の対応状況が移行先と一致するかを個別に確認する

こういう状況で使います

  • TiDBで動いていたSQLが、Aurora MySQLの検証環境でエラーになる
  • 移行後に採番の連続性が変わり、アプリケーション側の想定と食い違う
  • 同じインデックスがあるのに、移行後だけ実行計画が変わって遅い
  • 外部キー違反のデータが既に存在していて、移行先で投入できない
  • 移行先のストレージ見積りが、移行元の報告値と大きく食い違う
  • 文字列の比較・並び替えの結果が移行前後で変わった

考えられる原因(可能性の高い順)

  1. 01

    `AUTO_INCREMENT` の割り当て方式が異なる

    TiDBは各ノードに採番範囲をまとめて割り当てるため、採番が連続しないことがあります。「IDの大小=挿入順」を前提にしたアプリケーションは、移行の前後どちらでも見直しが必要です。具体的な挙動はバージョンと設定に依存するため、自環境で連番性を実測してください。

  2. 02

    `AUTO_RANDOM` に相当する機能がMySQLに無い

    ホットスポット回避のためのTiDB固有機能です。Aurora MySQLへ移行する際は、値の生成方式そのものを設計し直す必要があります。既存データのID値をそのまま持ち込めるかも併せて確認してください。

  3. 03

    クラスタ化主キーの前提が違う

    InnoDBは主キーでクラスタ化されるのが基本ですが、TiDBではクラスタ化・非クラスタ化を選べます。非クラスタ化のテーブルは、移行後にアクセスパターンごとの性能特性が変わります。

  4. 04

    トランザクションの動作が異なる

    楽観トランザクションではコミット時に競合が検出され、悲観トランザクションでは実行時にロックを取ります。どちらで動いていたかによって、移行後のロック待ちやエラーの出方が変わります。

  5. 05

    TiDB固有の構文・システム変数・ヒントを使っている

    `TIDB_` で始まるシステム変数、TiDB独自のオプティマイザヒント、`ADMIN` 系の管理コマンドはMySQLでは動きません。アプリケーションとバッチのSQLを全文検索して洗い出してください。

  6. 06

    統計とインデックス選択の仕組みが違う

    オプティマイザが別実装である以上、同じインデックス構成でも選ばれる実行計画は異なりえます。移行後に「同じSQLなのに遅い」ことは想定内として、代表クエリの実行計画を移行先で取り直す前提を置いてください。

  7. 07

    ストレージの構造が異なる

    TiKVはレプリカを持ち圧縮も行います。InnoDBとは前提が異なるため、移行元の使用量から移行先の必要容量を機械的に換算することはできません。

確認手順

  1. 1

    TiDBのバージョンと主要設定を取得する

    参照のみ

    `TIDB_VERSION()`、`tidb_txn_mode`、照合順序フレームワークの状態を確認します。以降の判断はすべてこの結果が前提になります。

  2. 2

    全テーブルの `SHOW CREATE TABLE` を保存する

    参照のみ

    TiDB固有の属性は定義文にしか現れないものがあります。全量を保存し、`AUTO_RANDOM` / `SHARD_ROW_ID_BITS` / `NONCLUSTERED` を検索します。

  3. 3

    アプリケーションのSQLからTiDB固有要素を全文検索する

    参照のみ

    `TIDB_`、独自ヒント、`ADMIN` コマンドを検索します。DB側からは見えないため、コード側で洗い出す必要があります。

  4. 4

    外部キーが実際に強制されているかを検証環境で試す

    違反するINSERTを実行して、エラーになるかどうかを確認します。定義の有無だけでは判断できません。

  5. 5

    代表テーブルを移行先へ試験ロードして容量比を実測する

    この実測値だけが、移行先ストレージの見積りの根拠になります。

  6. 6

    代表クエリを移行先で実行して実行計画と所要時間を比較する

    移行元と同じ性能が出る保証はありません。差が出たクエリを個別に対処する時間を計画に含めてください。

対応方法

すぐに実施できる低リスクの対応

  • バージョンを確定させ、差分項目を一覧化する

    参照のみ

    「TiDBだから」ではなく「このバージョンのTiDBだから」で判断します。差分の一覧が移行計画の骨格になります。

  • 移行対象と対象外を先に切る

    参照のみ

    一時テーブルや分析用の大きなテーブルを移行対象から外せるなら、初期ロードの負担が大きく下がります。

事前検討が必要な変更

  • `AUTO_RANDOM` 列の設計を置き換える

    移行先での採番方式(連番、アプリケーション採番、UUID系)を決め、既存値の移行可否と桁数を確認します。アプリケーション側の変更を伴います。

  • 主キーの無いテーブルにキーを用意する

    CDCで差分同期する場合、主キーが無い表は適用エラーの原因になります。移行前にキーを定義してください。

  • 代表クエリの実行計画を移行先で取り直す

    移行先でインデックスの追加・変更が必要になる前提で、検証期間を計画に確保します。

  • 文字セットと照合順序を移行先の基準に統一する

    照合順序の違いは比較結果を変えます。utf8mb4化の確認項目は関連文書を参照してください。

再起動・サービス影響を伴う変更

  • 初期ロードを実施する

    Dumplingなどでダンプし、移行先へロードします。所要時間は必ずサンプルでの実測から見積もってください。

  • 差分同期(TiCDC / DMS)を構成する

    本番ソースへの設定追加になります。遅延の監視方法と切り戻し手順を決めてから実施してください。

専門家のレビューが必要な作業

  • 切り替え(カットオーバー)を実施する

    専門家レビュー必須

    書き込み停止、差分の追いつき確認、整合性検証、接続先切り替え、切り戻し判断の順序と担当を決めたうえで実施します。ここは自動化ではなく、事前合意された手順と人の判断で進める領域です。

!注意事項

  • TiDBの挙動はバージョンによって変わります。本記事の記述と自環境の出力が食い違う場合は、必ず自環境の出力を優先してください。
  • 「MySQL互換」は「同一」ではありません。構文が通ることと、同じ結果・同じ性能になることは別です。
  • TiDB側の `DATA_LENGTH` をAuroraの必要ストレージにそのまま換算しないでください。TiKVはレプリカと圧縮を前提とした値です。
  • 外部キーは、定義があっても強制されていない可能性があります。移行先で強制されるようになると、既存データの投入や既存処理が失敗することがあります。
  • 移行の所要時間は、この記事では示しません。テーブル構成・データ量・ネットワーク・並列度で変わるため、必ずサンプルでの実測から見積もってください。
  • カットオーバーは取り返しのつきにくい作業です。切り戻し可能な地点(point of no return)を事前に定義し、判断者を決めてから実施してください。

バージョン・環境による違い

TiDBのバージョン差クラスタ化主キーの既定、照合順序フレームワーク、外部キーの強制、TiCDCのCLIオプションなどは、いずれもバージョンによって異なります。断定的な記述は避け、`SELECT TIDB_VERSION();` の結果に対応する公式ドキュメントを参照してください。
移行先がAurora MySQL 3.x(MySQL 8.0互換)の場合照合順序の既定が `utf8mb4_0900_ai_ci` 系になるため、移行元の照合順序と比較挙動が変わることがあります。一意制約のある列で重複判定が変わらないかを検証してください。
移行先がAurora MySQL 2.x(MySQL 5.7互換)の場合MySQL 8.0で追加された構文(ウィンドウ関数、CTEなど)をTiDB側で使っていた場合、移行先で動きません。SQLの棚卸しが必要です。

これで解決しない場合に確認すること

  • アプリケーションのドライバとタイムアウト設定を確認する

    接続先が変わることで、再接続やタイムアウトの挙動が変わることがあります。

  • 分析系ワークロードの行き先を決める

    TiDBで分析系クエリを同居させていた場合、Aurora単体では同じ性能特性にならない可能性があります。読み取り専用インスタンスや別基盤の利用を検討してください。

  • バッチ処理の並列度と実行時間を再測定する

    ストレージ構造が変わるため、同じ並列度が最適とは限りません。

  • 運用手順(バックアップ、監視、権限管理)を移行先向けに作り直す

    TiDB向けの手順はそのまま使えません。移行計画に運用手順の作成を含めてください。

  • 切り戻し(ロールバック)の条件と手順を確認する

    どの時点まで戻せるのか、戻す場合に何を捨てるのかを、切り替え前に文書化してください。

この文書の根拠と限界

一般的な技術説明

TiDBとMySQL(Aurora MySQL)の公開されている仕様上の差分と、一般的な異種DB間移行の検証手順に基づきます。TiDBはバージョンによる挙動差が大きいため、本記事は「何を確認すべきか」を示すもので、個々の挙動を断定するものではありません。特定顧客の移行事例および所要時間の実績値は含みません。

よくある質問

TiDBはMySQL互換なので、そのまま移行できますか?

そのままとは限りません。互換なのは接続プロトコルと大部分のSQL構文で、採番の挙動、主キーの構造、トランザクションの動作、統計とインデックス選択、ストレージの前提はそれぞれ異なります。構文が通ることと同じ結果・同じ性能になることは別問題として、項目ごとに検証してください。

AUTO_RANDOM を使っている列はどうすればよいですか?

MySQLに同等の機能がないため、採番方式そのものを設計し直す必要があります。連番、アプリケーション採番、UUID系のいずれにするかを決め、既存のID値をそのまま持ち込めるか、桁数がアプリケーション側の想定に収まるかを確認してください。

移行先のストレージはどれくらい必要ですか?

移行元の報告値からは決められません。TiKVはレプリカを保持し圧縮も行うため、InnoDBとは前提が異なります。代表的なテーブルを実際に移行先へロードし、その比率から全体を見積もってください。

Productionで実行できますか?

調査用のSQLはすべて参照専用で、本番のTiDBでも実行できます。Dumplingによるダンプは読み取り負荷がかかるため時間帯の調整が必要で、TiCDCやDMSの構成は本番ソースへの設定変更にあたります。カットオーバーは事前合意した手順に沿って実施してください。

外部キーはどうなりますか?

TiDBでは、定義されていても実際には強制されていない場合があります。強制されるかどうかはバージョンに依存するため、違反データを投入してみて実挙動を確認してください。強制されていなかった場合、移行先で外部キーが有効になると既存の処理が失敗する可能性があります。

結果をどう判断しますか?

チェックリストの各項目について「差分なし」「アプリケーション変更が必要」「設計変更が必要」の3つに分類します。設計変更が1件でもある場合、移行はデータの引っ越しではなくアプリケーション改修を含む案件になります。日程はその前提で引いてください。

この文書がカバーする質問

  • MySQL互換DB間のインデックス差異をどう確認するか
  • TiDBのAUTO_INCREMENTが連続しない理由を知りたい
  • TiDBからRDSへ移行する際のデータ量見積り
  • TiDBの外部キーはMySQLと同じように動くのか

リスク表示の意味

  • 参照のみデータと設定を変更しません。
  • 影響は限定的ですが、権限と負荷の確認が必要です。
  • 性能・ロック・コストに影響する可能性があります。
  • 障害・データ損失・復旧作業が発生する可能性があります。
  • 専門家レビュー必須本番適用前に別途レビューが必須です。

GIIPの対応範囲

移行の判断そのものは、この記事のチェックリストを自環境で埋めれば進められます。負荷が高いのは、移行後に「移行元では出ていなかった問題」を拾い続ける期間です。GIIPでは、切り替え後の一定期間、代表クエリの実行時間・実行計画・エラー率を移行前の値と並べて追跡し、劣化が出たものだけを対応対象として切り出しています。移行作業そのものは人が判断し、その後の継続的な比較と一次調査をAIエージェントが担う分担にしています。

執筆・技術検証

GIIP プロダクション運用チーム

大規模Webサービス、SQL Server、Oracle、AWS、Azureの設計・移行・運用に約30年従事。x12largeクラスのAWS RDS for SQL Server環境12セット、約12万テーブルのOracle環境、約3TBのTiDBからAurora MySQLへの移行を経験。現在も複数のクラウドデータベースと約30のWebサービスを、AIエージェントと人間の専門家が継続的に監視・運用しています。

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